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CARA  SONRIENTE

CARA SONRIENTE

・・・。~田中聖~ BD小説

「・・・。」


あーっ。ちょぉ~っと今日はさみーかもっ。
もう11月だもんな~。
13時2分。約束の時間から2分が過ぎた。
あれ?今日は中丸との待ち合わせじゃねーよな。
今日は気になるアイツとの約束。
中丸じゃなくて女だよ?

「やっぱさみーや」

駅前を吹き抜ける風がやたら冷たくて、そう呟いた時、
人ごみを掻き分けながら、走ってくるアイツを見つけた。
見つけやすいように手を上げて合図。

「聖!ごめんね!服選ぶのに手間取っちゃって」

息を整えながら夕紀が言う。

「似合ってるから許してやるよ」

少し伸びた夕紀の髪をくしゃくしゃってする。
隣で夕紀が俯いた。照れてんのかな。



「んじゃ行くか」

少し歩いて、行きつけのカフェに入る。

「あれ?珍しいじゃん。」

向かい側に座った夕紀の前にはアイスティー。

「いっつもお前、フラペチーノ系じゃん?」

ここに来ると、必ず甘いドリンクを飲んでた夕紀。

「ダイエットだよ。3キロも太っちゃった」

夕紀は、そう言って頬を膨らませる。

「秋のせいじゃね?」
「絶対そうだよね?!美味しい食材が揃ってるから!」
「お前、自分に言い聞かせてんじゃねーよ」
嫌味を言いながらも微笑む俺。
「いいじゃん。言い訳くらいさせてよ。いいなぁ~聖はあんなに食べるのに全っ然太んないんだもん!」
「俺は踊ってっからね。全く運動しない夕紀とはちげーよ」

俺が得意げに言うと、夕紀はまたちょっと膨れ顔。
でもまたすぐ笑顔に戻る。

こんな風に繰り広げられる会話がいとおしくて、
こんな風に過ごせる時間がいとおしくて、
こんな風に笑う君がいとおしくて、
こんな風に何気ない会話をしてても、でもやっぱり『それ』は気になって。

君の左手の薬指から放たれる、そのシルバーの光。
知らない間に君の笑顔は誰かのモノになっちゃったのかな、なんて考えて。考えざるを得なくて。

「聖?どったの?真面目な顔しちゃって」

夕紀に顔を覗き込まれて、ふと我に帰る。

「あー悪ぃ。ちょっと考え事」
「へーっ。聖でも頭使うことあるんだ」

いたずらっぽく笑って夕紀が言う。

「うるせーよ。俺だっていろいろ考えてるっつーの」
「はいはい。そんなムキになんなくても。さ、行こっか」

夕紀が席を立つ。
その小さな背中にまた1つ。愛しさが募る。


カフェを後にして、並木道を歩く。
寒さに色付きはじめた周りの木々。
同じようにほんのり赤く染まる夕紀の頬。
たまらなく愛しくて、つい、その頬に触れてしまいそうになる。
けど、そんなことしたら俺の理性は吹っ飛んじゃいそうだから。
伸ばしかけた右手をそっと隠した。

“こいつ、男いるんだろーしな”

嫌な理性も働いちまう。
視界に入るシルバーのリング。
あーうぜぇ。

『純な恋してんのな』

前に夕紀のこと話した時の中丸の言葉も浮かぶ。
だからうぜぇって。



「ねぇ、やっぱ今日、聖、変。何かあったの?」

ケラケラ笑いながら夕紀が言う。

「いや、何もねーから」

ぶっきらぼうに答える俺に、更に葉っぱをかける夕紀。

「いや、絶対何かあったはず!!絶っ対変だもん!!あたしに隠し事する気?そんなことさせないから。早く言いなよ~。ほらっ、早く!!」

「あ~もううぜぇ。俺さ、おめぇのこと好きなんだわ。
 マジ、本気で。
 けど、お前、男出来たみたいだし、言わずにいようって思ってたんだけど」

そこまで一気に言ったところで夕紀が口を開く。

「ちょっと待って。あたしに男って…?どーゆーこと?」

「え。だってそれ…」

夕紀の左手の薬指を指す。
ゆっくり俺の指した指の先に目をやる夕紀。

「…あ。これかぁ。」

ふっと笑って夕紀が続ける。

「これね、別に誰かにもらったものとかじゃなくて。
 この前、ちょっとここに傷作っちゃって。
 何か目立つから隠したいな~って思ってつけてただけなの」
「へっ?」

呆気にとられる俺。

「じゃあ…」
「うん。彼氏なんて出来てません。あたしに出会いが無いのは、聖がいちばん知ってるでしょ?」
「まぁ、そうだけど…」

口ごもった俺に、更に夕紀が続ける。

「あ~あ。せっかくあたしから言おうと思ってたのに」

また数時間前のように頬を膨らませる夕紀。
恥ずかしさなのか、西からの光のせいなのか、夕紀の頬が更に赤く染まる。

「聖の、19回目の誕生日に、気持ちを伝えるつもりだったの。
 『好きです』って。
 なのに聖、先に言っちゃうんだもん。バカ」

そう言って夕紀が俺を見上げる。
思わず、小さな夕紀を力いっぱい抱き締めた。
俺の理性、もう、吹っ飛んでもいいよね?


夕紀が、俺の腕の中で呟いた。

「今年の誕生日は、一緒にお祝いさせてね」


(2004.11.2)


=あとがき=
Trasy Novelでゴメンナサイ。
少し早い聖のBDお祝い小説です。
ちょうど今日ぐらいに繰り広げられてた会話なんじゃないですかね(笑)
1年位前のM誌に載ってた彼のポエムから案を頂きました(爆)
あのポエム見て、すぐに書き始めてたんですが、なかなか筆が進まず(^^;
1年越しのお話となりました。
聖っぽさが出てるといいなぁって思います。
感想、聞かせてくださいね。Trasyですが(爆)
聖ちゃん、HAPPY BIRTHDAY!!

中丸さんの名前が3度も出てきてしまったのは、やっぱり自担の性(爆)
お許しを…m(_ _)m













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